応物談話会 (工学研究科附属クリスタルエンジニアリング研究センター共催)
応物談話会(2024年度)
日時 | 2025年1月28日(火)12:15〜13:15 |
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場所 | 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド) |
題目 | 圧力効果にもとづく新奇超伝導状態の解明と制御 |
講演者 | 名古屋大学工学研究科応用物理学専攻 講師 谷口 晴香 氏 |
講演要旨 | 超伝導状態での電子対の組み方(超伝導ギャップ関数)にはs波, p波, d波, …といったバラエティがあり、中には2種類の電子対が混在する超伝導体も提案されている。このような系では、2種類の電子対の比率を制御することで、トポロジカル相転移に伴う超伝導転移温度の急上昇や、1種類の電子対からなる新しい超伝導相の発現などが期待できる。私達は候補物質であるCaAgPやSr2RuO4について、制御パラメータとして静水圧や一軸圧を用い、電子状態の変化を解明するための実験研究を行っている。発表では、超伝導ギャップ関数に直結する情報が得られる超伝導接合特性を、一軸圧下で測定するための技術開発の現状を報告する。また、CaAgPへの静水圧効果も紹介する。
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日時 | 2024年12月24日(火)12:15〜13:15 |
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場所 | 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド) |
題目 | 分子モータータンパク質の動作メカニズムを計算から考える |
講演者 | 名古屋大学工学研究科応用物理学専攻 准教授 寺田 智樹 氏 |
講演要旨 | ミオシンとアクチンは、化学的エネルギーを力学的仕事に変換する分子モータータンパク質の主要なメンバーである。これらの役割のうち最も身近で重要なものとして、筋肉における力発生が挙げられるが、それ以外にも細胞内物質輸送や細胞分裂などの様々な現象で、少しずつ異なるミオシンが利用されている。講演者は、タンパク質が構造を変化させながら機能を発現する過程について、主に粗視化分子動力学計算を用いた研究を行ってきた。本講演では、筋肉において構造変化とともにブラウン運動が積極的な役割を果たすという新しい動作メカニズムについての研究と、細胞内物質輸送に関わるミオシンについて提唱された二つの動作メカニズムを自由エネルギー計算により比較検討した研究について紹介する。
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日時 | 2024年12月18日(水)16:00〜17:30 |
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場所 | 工学部3号館332講義室 |
題目 | 新規強誘電体を目指した物質設計と実際 |
講演者 | 芝浦工業大学 工学部先進国際課程 教授 山本 文子 氏 |
講演要旨 | ペロブスカイト型構造を有する KNbO3 や KTaO3は、Nb や Ta がd 0 配置をとるため高誘電性を内在している。また、これらは変位型誘電体として知られ、結晶構造と誘電性に強い相関を持つ。私たちのグループでは、最近、高圧力を用いることで、K を同じアルカリ金属でイオン半径がやや大きい Rb で置き換えたペロブスカイト型の RbNbO3、RbTaO3 および関連物質を合成し、その逐次相転移を調べている。特に、K1-xRbxNbO3 は、単なるサイズ効果だけではない多様な組成-温度相図が現れ、大変興味深い。本講演では、これら物質系の結晶化学と材料物性を概観する。
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日時 | 2024年11月26日(火)12:15〜13:15 |
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場所 | 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド) |
題目 | ハイエントロピー化合物における強相関電子物性の開拓 |
講演者 | 名古屋大学工学研究科応用物理学専攻 准教授 平井 大悟郎 氏 |
講演要旨 | ハイエントロピー化合物は5種類以上の多種元素により構成される化合物である。物質の熱力学的安定性はギブス自由エネルギーによって決まるが、ハイエントロピー化合物は、通常支配的なエンタルピー項ではなくエントロピー項により高温で安定化される準安定相である。多種元素の混合により、優れた力学特性や触媒活性などを示すため、ハイエントロピー化合物は近年物質科学の分野で盛んに研究されている。私たちはハイエントロピー化合物の伝導性に大きく影響する陰イオンに着目して、超伝導や磁性などの強相関電子物性を対象とした物質開発を行っている。本発表では、最近合成に成功したハイエントロピーアンチモン化合物やハイエントロピーTMDの合成および物性測定の成果を紹介し、ハイエントロピー化合物示す特異な物性の起源について議論する。
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日時 | 2024年11月6日(水)16:30〜18:00 |
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場所 | 理学部A館222号室 |
題目 | Molecular evolution of cellular membranes |
講演者 | 名古屋大学 シンクロトロン光研究センター(大学院工学研究科応用物理学専攻) YLC特任助教 星野 洋輔 氏 |
講演要旨 | Cellular membranes are essential components for all life to maintain an inner space that is physically and chemically distinct from the outside world and conduct vital metabolic activities. Cellular membranes are two-dimensional planes formed by an array of amphiphilic biomolecules called lipids, carving out a specialized hollow space for biological activities. Lipids have various chemical compositions and structures, which greatly influence the physio-chemical properties of membranes, such as permeability and flexibility, and hence the combination of different lipids enables the formation of functionally diverse membranes. However, it is not known what kind of cellular membranes were present in the first cellular life on Earth and what processes led to the emergence of the membranes as we know them today. This is one of the fundamental questions in understanding how life comes into being. All life forms on Earth are divided into three domains: Bacteria, Archaea and Eukarya, all of which are inferred to have evolved from a primitive cellular life form called the Last Universal Common Ancestor (LUCA). Each domain has its own cellular membrane with a unique lipid composition, reflecting their 4 billion year-long evolutionary history. This seminar aims to overview the membrane diversity of modern life and disentangle the complex molecular evolution of cellular membranes. A particular focus will be on a large group of lipids called terpenoids, which have increasingly gained attention as modulators of membrane dynamics, which potentially played a critical role in directing the evolutionary trajectory of cellular membranes and in turn has a great application potential towards biomimetics and synthetic biology.
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日時 | 2024年10月28日(月)16:30〜18:00 |
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場所 | 工学部3号館321講義室 |
題目 | 有機エレクトロニクスとエナジーハーベスティング |
講演者 | 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授 中村 雅一 氏 |
講演要旨 | 奈良先端大有機エレクトロニクス研究室では、有機低分子、有機高分子、有機無機ハイブリッドペロブスカイト、カーボンナノチューブなどを半導体材料として用いる様々なデバイスの探索研究を行っている。本講演では、当研究室で進めているウェアラブル熱電変換素子に関する研究、当研究室で見いだされた巨大ゼーベック効果に関する研究、ストレッチャブルな太陽電池の実現を目指したポリマー太陽電池の研究、および、超フレキシブル電子回路のためのポリマートランジスタに関する研究から、最近のトピックを紹介する。
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日時 | 2024年10月22日(火)12:15〜13:15 |
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場所 | 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド) |
題目 | 無機柔粘性結晶の開拓 |
講演者 | 名古屋大学工学研究科応用物理学専攻 准教授 片山 尚幸 氏 |
講演要旨 | 構成分子の配向が揃ったまま、重心位置に秩序がない状態を「液晶」といい、逆に、重心位置が揃ったまま配向に秩序を持たない状態を「柔粘性結晶」という。柔粘性結晶研究の舞台は有機系の分子性材料であり、構成分子の配向制御による強誘電性の発現や、回転エントロピーに由来した熱量材料へ応用が期待されている。本発表では、こうした柔粘性結晶状態を、緻密なネットワーク構造をもち、一見すると「分子」という単位とは無縁であるように思われる無機材料で実現したという研究成果について紹介する。無機材料が「分子」という構成単位をもつとはどういうことか?また、これが柔粘性結晶に分類されるダイナミクスを示すとはどういうことか?。これらの疑問への答えを、放射光X線を用いた最新の構造研究の成果に基づいて解説したい。また、こうした「無機柔粘性結晶」開発の過程で研究室の学生が挙げてきた数々の成果についてもあわせて紹介する。
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日時 | 2024年7月30日(火)12:15〜13:15 |
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場所 | 工学部3号館341講義室(オンライン配信とのハイブリッド) |
題目 | 科学技術計算のための数値線形代数の研究紹介 |
講演者 | 名古屋大学工学研究科応用物理学専攻 准教授 曽我部 知広 氏 |
講演要旨 | 物理的・工学的諸問題などの科学技術計算に現れる連立一次方程式、固有値問題、特異値問題、最小二乗問題を解くための数値計算法を創出・解析するための研究分野として数値線形代数学(Numerical Linear Algebra)がある。本発表では我々がこれまで行ってきた数値線形代数の研究やその拡張である数値多重線形代数(テンソル計算)、多重線形性の性質を活用する量子計算、そして関数の行列への拡張である行列関数の計算法の研究成果について紹介する。特に共同研究の可能性に向けたシーズ提供を意識し、これまで学生と共に研究してきた様々な数値計算法を中心に説明する。
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日時 | 2024年6月18日(火)12:15〜13:15 |
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場所 | 工学部3号館342講義室(オンライン配信とのハイブリッド) |
題目 | カーボンナノチューブ複合体における励起エネルギー移動 |
講演者 | 名古屋大学工学研究科応用物理学専攻 准教授 小山 剛史 氏 |
講演要旨 | 物質間で起こる励起エネルギー移動は複合体の光励起状態に内在する緩和過程の一つである。この移動は例えば光合成の初期過程であり、その理解は工学において基礎的および応用的に重要である。講演者はカーボンナノチューブ間、カーボンナノチューブと内包分子の間で起こる励起エネルギー移動を対象とし、移動レートにナノメートルスケールの特徴が現れることを明らかにしてきた。本講演ではこれらの研究成果を紹介するとともに、高速な励起エネルギー移動を観測する手法としてフェムト秒時間分解発光分光法についても紹介する。
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日時 | 2024年5月21日(火)12:15〜13:15 |
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場所 | 工学部3号館342講義室(オンライン配信とのハイブリッド) |
題目 | 歪と電解質ゲートによる有機導体の物性研究 ―分子性導体の格子変形による物性制御と導電性高分子の金属的伝導の実現― |
講演者 | 名古屋大学工学研究科応用物理学専攻 准教授 伊東 裕 氏 |
講演要旨 | 有機導体は軽量フレキシブルな特徴を生かした未来のデバイスの基盤となる夢の新材料であるとともに新奇物性と新機能の宝庫であると考え、有機導体の伝導特性から応用へとつながる研究に長年携わってきた。講演では、BEDT-TTF系結晶性分子性導体の金属絶縁体転移・超伝導転移に対する歪による格子変形による伝導物性制御と電解質ゲートドーピングの試み、および、電解質ゲートによって電気化学ドープした導電性高分子における金属的伝導の実現と、結晶領域・境界領域からなる薄膜構造との関係について取り上げる。
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2024年度