応物談話会 (工学研究科附属クリスタルエンジニアリング研究センター共催)

日時 1月30日(火)12:15〜13:15
場所 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
題目 磁性をもつトポロジカル物質に着目した新奇電子機能の開拓
講演者 名古屋大学工学研究科応用物理学専攻  
助教 矢野 力三 氏
講演要旨 物質の中側(バルク)は絶縁体(半導体)でその表面には質量をもたない電子を有するトポロジカル絶縁体の発見から始まり、現在ではDirac半金属、Weyl半金属など様々なトポロジカル物質が見つかっている。トポロジカル物質はあるトポロジカル(位相幾何学的に)特徴的な量をもつ物質で、多くの場合その表面状態とバルクの性質が異なり、通常の金属や絶縁体では実現しないような特異な電子状態をもっている。例えば、それらの中を動く電子はあたかも巨大な磁場(仮想磁場)を感じ、外磁場にとても敏感な応答を示すことから高感度センサーへの応用などが有望視されている。一方で、その仮想磁場は超伝導などと組み合わせる新奇な超伝導状態が発現することも期待されている。講演者はトポロジカル物質の中でも磁性を持つトポロジカル物質という数の少ない物質に着目して、これまで物質探索から接合研究を行ってきた。当時はその基本概念から紹介する予定である。
日時 1月9日(火)12:15〜13:15
場所 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
題目 Silicon-on-insulator技術を用いた透過電子顕微鏡用電子直接CMOSカメラの開発
講演者 名古屋大学未来材料・システム研究所  
助教 石田 高史 氏
講演要旨 透過電子顕微鏡において電子直接検出カメラの登場により低線量観察でも良好な像質が得られるようになり、生体試料のような電子線ダメージに弱い試料の高分解能構造解析も可能となっている。電子直接検出カメラは現状で最も優れた電子線の検出法の一つである一方で、素子の放射線耐性や価格面で課題あり広く一般に普及している状況ではない。我々の研究グループは上記の課題に加えてサブマイクロ秒時間での撮像の可能性を模索するため、高い放射線耐性をもち産業界の標準プロセスを基本に開発されているSilicon-on-insulator(SOI)技術を用いた直接検出型CMOSカメラの電子顕微鏡応用を進めている。このSOI-CMOSカメラは研究者が回路設計から携わることができるためこれまでにない機能の搭載が可能である。本講演では、透過電子顕微鏡およびSOI-CMOSカメラについて紹介した後、SOI-CMOSカメラを透過電子顕微鏡で性能評価した結果および本技術を用いて独自開発したサブマイクロ秒で連続撮像可能な電子顕微鏡向けSOI-CMOSカメラの実証実験の結果について紹介する。
日時 12月5日(火)12:15〜13:15
場所 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
題目 デザイン可能なタンパク質フォールドの条件解明とそれを用いた新規フォールドタンパク質のデノボデザイン
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
助教 千見寺 浄慈 氏
講演要旨 タンパク質のデノボデザインとは、自然界に存在しない全く新しいタンパク質を、物理などの指導原理を用いて設計する手法である。本講演では、物理的にデザイン可能なタンパク質フォールドの条件を明らかにした理論的研究と、それを用いた新規フォールドタンパク質のデノボデザインおよび実験的検証を行った結果を紹介する[1-3]。
[1] H. Murata et al., PLoS ONE 16, e0256895 (2021)
[2] T. Nishina et al., Molecules 27, 3547 (2022)
[3] S. Minami et al., Nature Structural & Molecular Biology 30, 1132 (2023)
日時 11月28日(火)12:15〜13:15
場所 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
題目 希土類金属間化合物の電子状態の解明
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
助教 草ノ瀬 優香 氏
講演要旨 希土類金属間化合物において、希土類の局在した4f電子はスピンと軌道の自由度をもちそれらの相互作用によって全角運動量Jが良い量子数になる。よって、4f電子は固体中で、多極子の自由度をもち、多極子秩序や多極子が関与した超伝導などの多彩な物性を示す。多極子のうち、歪みと結合する四極子自由度を直接観測する方法として、近年、熱膨張・磁歪測定により四極子の秩序変数を同定する手法が確立されつつある。本講演ではまず、四極子秩序を示すプラセオジム化合物の熱膨張・磁歪測定を用いて結晶場基底状態の秩序変数を評価する研究について紹介する。 次に、価数転移に負の大きな体積変化を伴うサマリウム化合物における光反射率測定を用いた電子状態の研究について紹介する。光反射率測定では、価数転移にとって重要なfermi準位付近の4fや5dの電子状態を調べることができる。元素置換で価数を制御できれば有用な体積機能材料となることが期待されている。
日時 10月24日(火)12:15〜13:15
場所 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
オンライン参加申込(リンク): [web]
題目 微分方程式に対する不連続Galerkin法による時間離散化法
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
助教 剱持智哉 氏
講演要旨 微分方程式は物理現象を記述するための標準的なツールであり、その数値計算手法の開発は物理現象のシミュレーションのために重要である。その中でも、高精度に数値計算する手法の開発は重要な課題の一つである.本講演では、微分方程式の時間変数の離散化手法に焦点を当てる。古典的な差分法は精度に制約があるため、高精度に数値計算するための手法が数多く開発されてきた。その1つに、不連続Galerkin法と呼ばれる手法に基づく時間変数の離散化法がある。この手法は、元々は空間変数の離散化に用いられていた有限要素法を時間方向に適用した手法であり, 精度を簡単に向上させることが期待できる。特に熱方程式との理論的な相性が良いことが知られている。本講演では、不連続Galerkin法による時間離散化法をなるべく丁寧に紹介し、その後、この手法に関して講演者が最近取り組んでいる研究課題について簡単に紹介する。
日時 10月10日(火)12:15〜13:15
場所 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
オンライン参加申込(リンク): [web]
題目 電子、磁気ラマン散乱分光法を用いた有機錯体における低エネルギー励起の解明
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
助教 中村優斗 氏
講演要旨 量子スピン液体、ディラック電子系、超伝導などの様々な興味深い物質において低エネルギーの励起状態に興味がもたれる。ラマン散乱分光測定では通常10~数100meVの範囲で測定が可能である。我々はこのエネルギー領域に観測される電子、磁気励起を反映した電子、磁気ラマン散乱に注目し研究を行っている。本講演では有機量子スピン液体物質において偏光制御されたラマン散乱分光測定を用いて初めて観測された磁気ラマン散乱について紹介する[1,2]。また有機物は電場、圧力、磁場といった外場によってディラック電子や超伝導などの特異な電子状態を示す。ラマン散乱分光測定は電場・圧力・磁場のような外場下での測定に拡張できる。そこで最近の圧力下におけるラマン散乱分光測定で観測したディラック電子由来の電子ラマン散乱について紹介する。また最近導入した1meVまでのラマン散乱スペクトルを観測するための測定系についても紹介する。
[1] Yuto Nakamura et al., J. Phys. Soc. Jpn. 83, 074708 (2014). [2] Yuto Nakamura et al., J. Phys. Soc. Jpn. 86, 014710 (2017).
日時 7月25日(火)12:00〜13:00
場所 工学部3号館333講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
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題目 導電性高分子の電荷輸送と物性制御
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
助教 田中久暁 氏
講演要旨 電気を流すプラスチックである導電性高分子は、ポリアセチレンにおける絶縁体-金属転移の発見を契機に物性研究や電子素子への応用研究が加速し、現在でも盛んに新材料合成が進められている。一方で、良質な単結晶を形成する無機材料や低分子系有機導体と異なり、高分子薄膜には構造の乱れや不均一性が存在し、物性機能を著しく制限する。そのため、「構造の乱れをどのように克服するか」は、高分子の微視的な分子設計から巨視的な素子設計にまたがる主要テーマである。それと同時に、結晶領域やアモルファス領域が混在する高分子膜膜の物性は対象とする領域に強く依存し、どのような手法で物性評価を行うかで、得られる情報は異なってくる。  本講演ではまず、我々が取り組んできた電子スピン共鳴(ESR)法を用いたミクロなサイズスケールにおける高分子膜の構造-物性相関の研究について紹介する。ESR法は金属転移などの電子状態変化を磁化率を通じて検知できるとともに[1]、π共役骨格のサイズや分子平面性などの分子骨格の違いを反映したキャリア運動を敏感に捉えることができ、電荷輸送の向上に資する分子設計の評価を可能とする[2,3]。 また、最近取り組んでいる、電解質を用いた高分子膜への精密かつ高濃度なキャリアドーピングと、それを用いた巨視的な電荷輸送や熱電特性の制御についても紹介する[4,5]。
[1] H. Tanaka et al., Adv. Mater. 26, 2376 (2014). [2] H. Tanaka et al., Commun. Phys. 2, 96 (2019). [3] H. Tanaka et al., Adv. Funct. Mater. 30, 2000389 (2020). [4] H. Tanaka et al., Sci. Adv. 6, eaay8065 (2020). [5] H. Ito et al., Commun. Phys. 4, 8 (2021).
日時 7月12日(水)12:00〜13:00
場所 工学部3号館333講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
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題目 バルク・エッジ対応の先にあるアンドレーエフ束縛状態の探索
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
特任助教 池谷聡 氏
講演要旨 世界的潮流となっているトポロジカル物質に関する研究の指導原理である「バルク境界対応」によれば、物質内部(バルク)の電子状態を記述する波動関数の大域的構造を特徴づけるトポロジカル数が、物質表面に現れ得る特異な低エネルギー準粒子の数を予言する。これまでのトポロジカル物質科学における主題は、このバルク境界対応の実証であった。そのため、トポロジーが予言する準粒子がうまく現れる様に物質の形状・表面・界面を設計することが肝要とされてきた。本研究では、敢えてそのような制約をなくし、トポロジカル物質の形状・境界条件を工夫することで、従来のトポロジーでは予言できないような準粒子を能動的に生成し、新奇量子物性を開拓・解明・制御することを目指している。 講演では特に、我々がマルチロケーショナル・マヨラナ準粒子と名付けた、量子非局所性とマヨラナ粒子性を同時に有する新奇準粒子について紹介する[1]。
[1] Y. Nagae, A. P. Schnyder, Y. Tanaka, Y. Asano, and S. Ikegaya, In preparation.
日時 6月13日(火)12:00〜13:00
場所 工学部3号館333講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
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題目 多自由度を持つ超伝導体におけるトポロジカルな性質
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
助教 矢田 圭司 氏
講演要旨 トポロジカル絶縁体の提唱及びその発見を機に、物性物理におけるトポロジーに多くの注目が集まるようになった。なかでも超伝導体におけるトポロジカルな状態においては端状態としてマヨラナ型準粒子励起が現れることから、擾乱に強いトポロジカル量子計算への応用が期待されている。我々はそのようなトポロジカル超伝導体が実現する例として、多自由度を持つ系におけるトポロジーについて研究を行ってきた。一般に超伝導体においてはスピン自由度の他に副格子や軌道の自由度を持つことがしばしばある。そのような自由度を持つ際には波数依存性のないペアポテンシャルを持つs波超伝導状態においてもトポロジカル超伝導体となることがある。その例として、トポロジカル絶縁体やワイル半金属などのトポロジカル物質の超伝導状態[1,2]や、遷移金属酸化物に代表される軌道自由度を持つ超伝導体のトポロジカル超伝導状態[3,4]について紹介を行う。いずれの場合においても系が持つ副格子や軌道の自由度のために波数依存性のないs波超伝導状態であるにも関わらず、スピン軌道相互作用が副格子や軌道自由度と結合して有効的にp波などの異方的超伝導となる。結果としてトポロジカルな超伝導状態となり、バルクエッジ対応により系の端にマヨラナ型準粒子励起が現れることを明らかにした。
[1] S. Sasaki et al., Phys. Rev. Lett. 107 217001 (2011) [2] B. Lu, K. Yada, M. Sato and Y. Tanaka, Phys. Rev. Lett 114 096804 (2015) [3] Y. Fukaya et al., Phys. Rev. B 97 174522 (2018) [4] S. Ando et al., Phys. Rev. B 106 214520 (2022)
日時 5月23日(火)12:00〜13:00
場所 工学部3号館333講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
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題目 原子層物質とそのヘテロ構造の新しい物性と機能
講演者 東京工業大学 理学院物理学系 
准教授 蒲 江 氏
講演要旨 グラフェンの発見を機に、近年、原子一層分まで究極に薄くした物質の研究が加熱しており、その結果、既存の物質にはない物性効果やデバイス機能が実現されている。 また、化学合成やドーピング技術の進展により多様な物質展開(超伝導体・金属・半導体・絶縁体・磁性体等)も可能となっている。さらに最近では、ヘテロ構造に代表される超格子作製技術も発展したことで、接合界面における電子構造や幾何学的特徴を活かした物性等、 原子層物質を舞台とした研究の幅/自由度は益々拡がりを見せている。本講演では、原子層物質に特徴的な光機能とそのデバイス応用を中心に最近の話題を紹介し、ヘテロやモアレ構造の物性探索など今後の研究展開についても紹介する。

集中講義

開講予定

日時 2023年12月20日(水)13:00~17:15、12月21日(木)13:00~18:00、12月22日(金)13:00~14:30、14:45~16:15(談話会)
講義題目 3次元コンピュータビジョン
講師 産業技術総合研究所 人工知能研究センター
主任研究員 櫻田 健 氏
談話会 12月22日(金)14:45~16:15 工学部 3 号館 321講義室
Spatial AIの発展と課題
日時 2023年12月14日(木)8:45~12:00、13:00~16:15、 12月15日(金)9:30~12:00 13:00~14:30、14:45~16:15(談話会)
講義題目 Exploring the Frontiers of Structural Biology
講師 名古屋大学 大学院工学研究科 応用物理学専攻
教授 シャバス レオナルド 氏
名古屋大学 シンクロトロン光研究センター
准教授 梅名 泰史 氏
談話会 12月15日(金)14:45~16:15 工学部 3 号館 341講義室
Advancing the Frontiers of Structural Biology
日時 2023年11月6日(月)13:00~17:15、11月7日(火)10:30~12:00 13:00~16:15、11月8日(水)10:30~12:00、13:00~14:30(談話会)
講義題目 (走査型)透過電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法を用いた結晶構造・電子状態分析のための基礎
講師 京都大学 化学研究所 先端ビームナノ科学センター 複合ナノ解析化学研究領域
准教授 治田 充貴 氏
談話会 11月8日(水)13:00~14:30 工学部 3 号館 332講義室
走査透過電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法による高空間・エネルギー分解能分析
過去の集中講義
2022年度

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2017年度

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