応物談話会 (工学研究科附属クリスタルエンジニアリング研究センター共催)

日時 10月10日(火)12:15〜13:15
場所 工学部3号館332講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
オンライン参加申込(リンク): [web]
題目 電子、磁気ラマン散乱分光法を用いた有機錯体における低エネルギー励起の解明
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
助教 中村優斗 氏
講演要旨 量子スピン液体、ディラック電子系、超伝導などの様々な興味深い物質において低エネルギーの励起状態に興味がもたれる。ラマン散乱分光測定では通常10~数100meVの範囲で測定が可能である。我々はこのエネルギー領域に観測される電子、磁気励起を反映した電子、磁気ラマン散乱に注目し研究を行っている。本講演では有機量子スピン液体物質において偏光制御されたラマン散乱分光測定を用いて初めて観測された磁気ラマン散乱について紹介する[1,2]。また有機物は電場、圧力、磁場といった外場によってディラック電子や超伝導などの特異な電子状態を示す。ラマン散乱分光測定は電場・圧力・磁場のような外場下での測定に拡張できる。そこで最近の圧力下におけるラマン散乱分光測定で観測したディラック電子由来の電子ラマン散乱について紹介する。また最近導入した1meVまでのラマン散乱スペクトルを観測するための測定系についても紹介する。
[1] Yuto Nakamura et al., J. Phys. Soc. Jpn. 83, 074708 (2014). [2] Yuto Nakamura et al., J. Phys. Soc. Jpn. 86, 014710 (2017).
日時 7月25日(火)12:00〜13:00
場所 工学部3号館333講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
オンライン参加申込(リンク): [web]
題目 導電性高分子の電荷輸送と物性制御
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
助教 田中久暁 氏
講演要旨 電気を流すプラスチックである導電性高分子は、ポリアセチレンにおける絶縁体-金属転移の発見を契機に物性研究や電子素子への応用研究が加速し、現在でも盛んに新材料合成が進められている。一方で、良質な単結晶を形成する無機材料や低分子系有機導体と異なり、高分子薄膜には構造の乱れや不均一性が存在し、物性機能を著しく制限する。そのため、「構造の乱れをどのように克服するか」は、高分子の微視的な分子設計から巨視的な素子設計にまたがる主要テーマである。それと同時に、結晶領域やアモルファス領域が混在する高分子膜膜の物性は対象とする領域に強く依存し、どのような手法で物性評価を行うかで、得られる情報は異なってくる。  本講演ではまず、我々が取り組んできた電子スピン共鳴(ESR)法を用いたミクロなサイズスケールにおける高分子膜の構造-物性相関の研究について紹介する。ESR法は金属転移などの電子状態変化を磁化率を通じて検知できるとともに[1]、π共役骨格のサイズや分子平面性などの分子骨格の違いを反映したキャリア運動を敏感に捉えることができ、電荷輸送の向上に資する分子設計の評価を可能とする[2,3]。 また、最近取り組んでいる、電解質を用いた高分子膜への精密かつ高濃度なキャリアドーピングと、それを用いた巨視的な電荷輸送や熱電特性の制御についても紹介する[4,5]。
[1] H. Tanaka et al., Adv. Mater. 26, 2376 (2014). [2] H. Tanaka et al., Commun. Phys. 2, 96 (2019). [3] H. Tanaka et al., Adv. Funct. Mater. 30, 2000389 (2020). [4] H. Tanaka et al., Sci. Adv. 6, eaay8065 (2020). [5] H. Ito et al., Commun. Phys. 4, 8 (2021).
日時 7月12日(水)12:00〜13:00
場所 工学部3号館333講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
オンライン参加申込(リンク): [web]
題目 バルク・エッジ対応の先にあるアンドレーエフ束縛状態の探索
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
特任助教 池谷聡 氏
講演要旨 世界的潮流となっているトポロジカル物質に関する研究の指導原理である「バルク境界対応」によれば、物質内部(バルク)の電子状態を記述する波動関数の大域的構造を特徴づけるトポロジカル数が、物質表面に現れ得る特異な低エネルギー準粒子の数を予言する。これまでのトポロジカル物質科学における主題は、このバルク境界対応の実証であった。そのため、トポロジーが予言する準粒子がうまく現れる様に物質の形状・表面・界面を設計することが肝要とされてきた。本研究では、敢えてそのような制約をなくし、トポロジカル物質の形状・境界条件を工夫することで、従来のトポロジーでは予言できないような準粒子を能動的に生成し、新奇量子物性を開拓・解明・制御することを目指している。 講演では特に、我々がマルチロケーショナル・マヨラナ準粒子と名付けた、量子非局所性とマヨラナ粒子性を同時に有する新奇準粒子について紹介する[1]。
[1] Y. Nagae, A. P. Schnyder, Y. Tanaka, Y. Asano, and S. Ikegaya, In preparation.
日時 6月13日(火)12:00〜13:00
場所 工学部3号館333講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
オンライン参加申込(リンク): [web]
題目 多自由度を持つ超伝導体におけるトポロジカルな性質
講演者 名古屋大学応用物理学専攻  
助教 矢田 圭司 氏
講演要旨 トポロジカル絶縁体の提唱及びその発見を機に、物性物理におけるトポロジーに多くの注目が集まるようになった。なかでも超伝導体におけるトポロジカルな状態においては端状態としてマヨラナ型準粒子励起が現れることから、擾乱に強いトポロジカル量子計算への応用が期待されている。我々はそのようなトポロジカル超伝導体が実現する例として、多自由度を持つ系におけるトポロジーについて研究を行ってきた。一般に超伝導体においてはスピン自由度の他に副格子や軌道の自由度を持つことがしばしばある。そのような自由度を持つ際には波数依存性のないペアポテンシャルを持つs波超伝導状態においてもトポロジカル超伝導体となることがある。その例として、トポロジカル絶縁体やワイル半金属などのトポロジカル物質の超伝導状態[1,2]や、遷移金属酸化物に代表される軌道自由度を持つ超伝導体のトポロジカル超伝導状態[3,4]について紹介を行う。いずれの場合においても系が持つ副格子や軌道の自由度のために波数依存性のないs波超伝導状態であるにも関わらず、スピン軌道相互作用が副格子や軌道自由度と結合して有効的にp波などの異方的超伝導となる。結果としてトポロジカルな超伝導状態となり、バルクエッジ対応により系の端にマヨラナ型準粒子励起が現れることを明らかにした。
[1] S. Sasaki et al., Phys. Rev. Lett. 107 217001 (2011) [2] B. Lu, K. Yada, M. Sato and Y. Tanaka, Phys. Rev. Lett 114 096804 (2015) [3] Y. Fukaya et al., Phys. Rev. B 97 174522 (2018) [4] S. Ando et al., Phys. Rev. B 106 214520 (2022)
日時 5月23日(火)12:00〜13:00
場所 工学部3号館333講義室(オンライン配信とのハイブリッド)
オンライン参加申込(リンク): [web]
題目 原子層物質とそのヘテロ構造の新しい物性と機能
講演者 東京工業大学 理学院物理学系 
准教授 蒲 江 氏
講演要旨 グラフェンの発見を機に、近年、原子一層分まで究極に薄くした物質の研究が加熱しており、その結果、既存の物質にはない物性効果やデバイス機能が実現されている。 また、化学合成やドーピング技術の進展により多様な物質展開(超伝導体・金属・半導体・絶縁体・磁性体等)も可能となっている。さらに最近では、ヘテロ構造に代表される超格子作製技術も発展したことで、接合界面における電子構造や幾何学的特徴を活かした物性等、 原子層物質を舞台とした研究の幅/自由度は益々拡がりを見せている。本講演では、原子層物質に特徴的な光機能とそのデバイス応用を中心に最近の話題を紹介し、ヘテロやモアレ構造の物性探索など今後の研究展開についても紹介する。

集中講義

開講予定

日時 2023年11月6日(月)13:00~17:15、11月7日(火)10:30~12:00 13:00~16:15、11月8日(水)10:30~12:00、13:00~14:30(談話会)
講義題目 (走査型)透過電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法を用いた結晶構造・電子状態分析のための基礎
講師 京都大学 化学研究所 先端ビームナノ科学センター 複合ナノ解析化学研究領域
准教授 治田 充貴 氏
談話会 11月8日(水)13:00~14:30 工学部 3 号館 332講義室
走査透過電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法による高空間・エネルギー分解能分析
過去の集中講義
2022年度

2021年度

2019年度

2018年度

2017年度

ページの先頭に戻る